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2013-2017 文科省科学研究費 特別推進研究

MEMS 多軸力センサを用いた生物の運動計測





Researches MEMSグループ 細胞グループ 昆虫グループ 人間グループ


研究目的

 本研究課題は、細胞(マイクロメートルサイズ)から人(メートルサイズ)まで、様々な大きさの生物が移動する時に生じる力のベクトル分布を周囲の力学環境を乱すことなく計測することで、生物の体のスケールが変化した場合にどのような物理現象を使って移動しているのかを解明することを目的とする。
 微小なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems 微小電気機械システム)多軸力センサを用いることで、表面の力学環境を乱さずに力ベクトルを計測し、生物の移動力の定量的な評価を実現する。

研究背景

   生物の活動において、移動は非常に大きな役割を果たしている。例えば、餌を捕獲・危険から退避するためにも移動は必要であるし、細胞などのように移動する動作が成長・分化に寄与する場合も存在する。生物は細胞のように個体がμmオーダー程度の大きさのものから、人のようにmオーダーを超える大きさのものまで非常に幅広い大きさのものが存在し、周囲の物理現象をうまく利用することで移動を行っている。
 例えば、細胞のようなμmオーダーの大きさの世界では重さが非常に小さいため、重力の影響を受けることがない、一方で表面張力や静電気力など人が普段気に留めないような力が支配的になる。また昆虫のようなmmオーダーの大きさの世界では、空気が粘り気のある物体としてその体に影響しており、この抵抗をうまく利用することで飛翔を行うことも可能となる。人のようなmオーダーの世界では、こうした空気の抵抗や土台の表面力の影響は少なくなり、重力の影響が支配的になるため、上手く移動するためには重心の移動を操る必要が出てくる。
 しかし、これまで生物と周囲の環境との間に働く力を定量的に計測することはできておらず、環境との間に生じた力をどのように利用して移動しているのかは未解明のままである。
 生物の移動に関わる力学モデルを解明することは、各大きさの世界での移動するために適した構造・方法を解き明かすことにつながるとともに、例えば成長など、移動に付随して生物の中で起きている現象がどのような外的要因によって発生・コントロールできるのかを解明する手がかりとなる。

研究方法

①MEMSセンサグループ、②細胞グループ、③昆虫羽ばたき飛翔グループ、④人間歩行グループ、の4グループが共同して研究を行う。

①MEMSセンサグループ
プローブ型多軸力センサと、平面型多軸力センサの2タイプのセンサを実現する。プローブ型多軸力センサは、プローブ先端に働く力のベクトル成分と軸周りのモーメント成分を計測し、一点に働く力の解析を可能とする。平面型多軸力センサは、生物が移動する際に生じる力の空間的な分布を計測し、力の分布や推移の解析を可能とする。

②細胞グループ
平面型多軸力センサアレイ上に細胞を培養し、細胞移動時の接地面と細胞膜の界面で作用する圧力およびせん断力の分布・推移を計測する。この力分布・推移情報を元に細胞移動時の力学メカニズムの解析に取り組む。

③昆虫グループ
プローブ型多軸力センサの先端に昆虫を固定し、羽ばたき運動中に発生する力を計測することで翼に働く力を直接計測する。翼周りに働く力の情報を元に運動モデルを構築し、包括的に昆虫飛翔運動の解析に取り組む。

④人間グループ
平面型多軸力センサを弾性体に埋め込み、両足の靴のインソールに設置することで、歩行時の足裏、足指に働く圧力、せん断力を多点で計測する。計測した歩行時の足裏力の分布・推移を元に運動モデルを構築することで総合的な歩行動作の解析に取り組む。

これらの4項目の研究課題を遂行することにより、様々な大きさの生物の移動時に生じる力を定量的に計測し、生物の移動に使われる物理現象がスケールにどのように依存するかを解明する。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 下山研究室
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